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“200年住宅”構想の成立条件(2008-01-11:ジャーナリスト・古川節弥)

 フローからストックの時代へ。福田内閣が打ち出した“200年住宅”構想は、環境やまちの景観に配慮し、持続可能な社会の構築を目指すものとして評価できる。大いに勧めてもらいたい。
  しかし、手放しで歓迎するわけには行かない。ストックの住宅とその環境を持続可能にするシステムや人材、そして最も重要な国民の意識の変換など時間をかけて解決すべき条件が多い。

 200年住宅ビジョンの実現・普及に向けて、自民党は12の政策提言をしている。超長期住宅ガイドの策定や住宅履歴書の整備に始まり、住宅ローンなど各種支援策、税負担の軽減、最後に良好なまちなみの形成・維持を提言している。そのためのロードマップ案も出来ており、20年度の予算要求にも計上されている。

  内容は200年住宅と銘打たなくても、今後の住宅政策に必要と思われるものだが、背骨に当たる“哲学”が欠けているように感じられる。

 この構想を実現するためには、住宅に対する従来の価値観を180度転換する必要がある。つまり、住宅という個人資産も、10万戸、1,000万戸集まれば立派な“社会的資産”である。政府も国民もこのことを共通認識としなければ、良好な住宅資産と住環境の形成は絵に描いた餅になりかねない。とりわけ都市とその近隣の良好な住宅地の形成には、規制すべきものと、緩和すべきものとの明確な棲み分けを示す必要がある。

 さらに住宅が社会的資産であることを前提にしたデベロッパーの社会的責任を明示してほしい。構造計算の偽装問題はシステムの欠陥もあるが、煎じ詰めればモラルの欠如としか言いようがない。200年住宅の実現のためには、企業の社会的責任をバックアップする人材の育成が急務であると思う。ストックを良好な状態で維持し、100年以上住めるような住環境を形成するためには、メンテナンスが欠かせないのは常識であろう。

 イタリアの例を挙げれば、これを“修復”と位置づけている。このため大学で建築を学ぶ学生の大半が修復士を目指している。この学生たちが、歴史的な建造物や住宅の修復、絵画・彫刻などの修復を担う人材として活動し、評価を受けている。日本の場合、大半の学生がデザインを志望し、主に設計を担う建築士になりたがる。構造計算などは下ずみの仕事だという認識が蔓延している。価値観の転換はここにも必要で、時間をかけても人材育成のシステムを構築することが、200年住宅実現のためにも欠かせない条件である。

 最後に、住民が「ここに住んでよかった」と実感できる住環境を維持するため、京都市のような「景観条例」を自治体が作成し、これを守ることが住環境の価値を高めるのだという合意を形成してほしい。ウィーンの建物はほとんどが高さ5階に規制されて、空の開けた住環境を作り出しているが、19世紀半ばのビスマルク時代の遺産でいまだに守られている。このしたたかさが街の美しさを維持している。

  ローマは1日にしてならず。200年住宅ビジョンも時間をかけて実現してほしい。

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