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高齢化率世界一、都市部の課題は高齢者の住まい(2008-05-09:立教大学コミュニティ福祉学部講師・竹下隆夫)

 わが国が現在、世界一の長寿国であることはよく知られているが、高齢化率(65歳以上人口が全人口に占める割合)でも世界一であることは必ずしもよく知られてはいない。高齢化率が7%超を高齢化社会、14%超を高齢社会、21%超を超高齢社会と称するが、我が国の高齢化の速度は急で、1970年に高齢社会に仲間入りしてから24年後の1994年に高齢社会に、そして一昨年から昨年にかけて超高齢社会に移行した。
 半世紀以内に高齢化が3倍速で進む例は欧米先進国にはなく、未曾有の経験である。それ故にこそ、わが国の高齢化対策は世界中が注視する実験舞台にもされている。

 わが国の高齢化はこの先さらに進展していき、2012年には65歳以上人口は3000万人を超え、2018年には3500万人に達すると予測されている。この高齢者人口規模はカナダの総人口に相当し、イギリスやフランスの総人口のほぼ半分に当たる。そして、今後の20年間に高齢者人口が大幅に増加するのは東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県のほかに、大阪、愛知、兵庫、福岡など大都市圏で、軒並み80万人前後の増と推計されている。

 問題は、こうしたボリュームの高齢者が安心して住まうことができる安全な住まいの確保であり、その一定割合が要介護状態になったとき、どこでどのような生活を送ることができるかである。むろん、介護サービスつきの特別養護老人ホームや有料老人ホームなどにすべての人が移り住むことも、その整備が追いつくことも不可能に近い。そのために在宅で、それも住み慣れた地域でできるだけ自立した生活が営めるように、近年、福祉政策と住宅・まちづくり政策が急接近している。

 福祉政策の方は、生活圏域というおおむね中学校区程度の地域を一つの生活単位として、その中に保健・医療・介護サービスというソフトをパッケージで整備し、地域全体を包括的にケアしうる体制づくりを推進している。その中心は、2006年の介護保険制度改正によって創設された地域密着型介護サービスや地域包括支援センター等であり、特別養護老人ホームや老人保健施設の特色であった24時間365日の安心機能を生活圏域全体に広げ、民活によるネットワーク化を推進しようとする事業展開である。

 他方、住宅・まちづくり政策の中心は、同じく2006年6月に制定された「住生活基本法」である。住生活基本法は、翌年には「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(住宅セーフティネット法)を生み、2001年に始まった高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)制度とファミリー向けの特定優良賃貸住宅(特優賃)制度を統合再編し、「地域優良賃貸住宅」制度(自治体と国の助成に加え優先入居等の措置)とした。

 高優賃は高齢者の身体特性に配慮した仕様を備えるとともに、緊急時対応サービスの利用が可能な賃貸住宅で、建設・改良費や家賃の一部が国・地方公共団体の補助対象となるが、日常生活支援サービスや介護サービスの提供を行うかどうかは事業者が独自に決めることができる。また、2005年12月から高齢者円滑入居賃貸住宅の一形態とされた高齢者専用賃貸住宅制度(高専賃)は、戸数要件、住戸面積、構造・設備などの設置基準は特に定められておらず、事業者にとってハード面でのハードルはほとんどないといってよい。そして、「老人福祉法」による一定要件を満たすことで介護保険制度の特定施設入居者生活介護(住み続けながら必要になったらケアが受けられる「自宅でない在宅」)の対象となり、郊外部などで広い持ち家を持て余しているような高齢者単身や夫婦世帯の、都心や中心市街地への「早めの住みかえ」(要介護になる前の住みかえ)を促進する手立てになっている。

 現在、高齢者がいるか高齢者単身・夫婦世帯が居住している持家は1900万戸余と推測されるが、その約8割は戸建で、そのうちの約3割は1970年以前に建てられたもので、バリアフリーをはじめ身体機能の低下に配慮された仕様とはなっていない。高齢化の進展に伴ってニーズが高まっている都市部の高齢者の新たな住まいの整備に際して、現状では高優賃、高専賃両制度は事業者の参入が比較的容易で自由度も高く、普及が期待される最も有効な手立ての一つといえる。要介護状態にならないような保健施策や、いざという時のための医療・介護サービス網が完備されたとしても、生活の基盤としての安心で安全な住まいとセットでなければそれぞれの機能は不十分なものとなる。「福祉は住まいに始まり住まいに終わる」と言われる所以でもある。

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