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【会員コラム】URと、今どきの団地妻のフシギな関係―男の「ダンチズム」と団塊リノベーション

■■山下 努■■(2007-05-09)
danchitsuma 社会学や都市計画の分野からも注目される郊外の老朽団地の再生。リノベーションや高齢化社会の再設計の視点から見ても、なかなかおもしろい「団地オタク」を紹介しよう。老朽化し、建て替え議論も出ている高度成長時代に造られた団地にシニア層からも熱い視線が向けられるだろう。外観は古びて人気がないため、スラム化の危機が指摘されるなか、どっこい救世主がいるものである。高度成長時代に、500万円ほどで戻れる夢のテーマパークが郷愁を誘うからだ。団塊の世代に団地ブームがやってくると私は期待している。
 写真説明:マニアに、ビンテージ団地としてダントツの人気を誇る公団牟礼団地(東京都三鷹市)。賃貸分譲並存で、60年代の傑作だ。現存する最古のスターハウス(星型の建築様式)。(撮影・照井啓太氏)
 いま、古い団地に注目するのは、建築家、都市計画家、自治体職員、歴史家から映画監督まで幅広い(かもしれない)。

 が、それだけではない。私は4月に開催された全国の団地通が集まる親睦会の花見に参加し、「団地研究家」の世界を垣間見た。

 初期の分譲型団地の傑作として歴史に残す公団阿佐谷団地で開かれた花見。同住宅は、近いうちに取り壊される運命だという。集まった面々はグラフィックデザイナー、都市計画関係、ミュージシャン、公務員など仕事は幅広く、趣味もカメラや廃虚探索、鉄道マニアといったこだわりのある専門家が多い。女性も独身者もいた。インテリアの関係者もこの世界にははまりやすいだろう。実際に古い蛇口やトイレのマニアもいるかもしれない。

 阿佐ケ谷団地は三浦展氏が『大人のための東京散歩案内』で、「団地といえば、ある意味で非人間的な住まい、均質で画一的な住居の代名詞のようなところだが、この阿佐ケ谷団地は違う。なんともほんわかしたムードで、心が安らぐ。思わず、ここは極楽だという言葉が浮かんだ」と書いている。マニアの解説によると、集合棟は珍しい低層の3階建てで、森の中に住宅があるという感じだ。真新しい周辺の民間開発の住宅街がやけに貧相に見えてしまう。再開発でこの空間が消えてしまうのは、マニアでなくても寂しいような気がするだろう。この後、スターハウスや独身棟で知られる荻窪住宅にも見学に行ったが、マニアに解説してもらうと見どころがたくさんあったことがわかった。

 さて、団地といえば映画だ。団地妻といってもピンク色に染まったものばかりではない。日本を代表する俳優が出演していた人気シリーズもある。そのひとつが「団地七つの大罪」(宝塚映画)で、64年の制作でカラーだ。原作は塩田丸男。例えば「虚栄の罪」は、小林桂樹、司葉子が出演。「覗きの罪」は、 高島忠夫 、益田喜頓 、浜美枝が出演。「嫉妬の罪」は 八千草薫 、草笛光子といった豪華メンバーで、「文明の罪」といった作品もある。当時若かった女優もすでに喪服世代に入っている。一部でいま、人気のある喪服シリーズの映画には月日の流れを感じさせられる。初期の団地妻はいまや年金世代だ。

 映画の舞台としては、団地は若妻、ウルトラマン、ホラー映画の舞台のセットとして使われてきた。高度成長の舞台だったからでだろうか。

 団地の住人となったのは、地方から都会に出て来た若者(ちょうど今頃は団塊の世代だろうか)。彼らは郊外の団地に住むのが夢だった。団地にする妻は文化的な生活を味わえるシンデレラだ。そんな彼らに子供が生まれるころ、テレビは全盛期を迎えた。ウルトラマンの撮影する舞台にも団地が選ばれていた。そこで戦うウルトラマンに2DKから声援が送られた。

 そのころ、三種の神器が普及し、団地の主婦の「肉体労働」は楽になった。時間を持て余した妻たちが映画に仕立て上げられた(皮肉にも、団地へのテレビの普及で映画産業は斜陽化したが)。この有閑主婦層は、一部、東急東横線沿線の一戸建て住宅街に移り住んだ。これが80年代の「金妻」ブームにつながっていく。こうしたスクリーンを通じたサブカルチャー的な考察からも、団地は戦後を振り返るテーマパークのようだ。シニア層がどの程度、高齢化した団地に関心を持っているかを知りたいところだ。

 「団地マニアをご存知か。見つけては撮影し、ニヤニヤする」と書かれた団地オタクが書いた団地ムックが4月15日に発売された。『僕たちの大好きな団地』(洋泉社)だ。

 「団地萌え」「廃墟としての団地」などの解説があり、「突貫工事」「政治の要請」などの団地キーワードが踊る。

 さて団塊の世代にとって団地とは何か。退職金の半分程度で古い団地を手に入れられ、輝いていた60年代に戻れるタイムマシン付きのテーマパークといえそうだ。これぞ男の「ダンチズム」。リフォームすれば、妻と同じように立派に化粧直しできる。団塊妻が新婚のころを思い出す三面鏡を置けるかもしれない。

 建物の耐用年数を半世紀とすると、あと20年ぐらいの余命の60代とまさに人生の最後を飾る舞台となる。

 ひと昔前に建てられた団地は意外と駅に近かったり、駅から遠い場合は緑地や空間となるスペースが魅力だ。ビンテージ団地が、500万円ならお買い得かもしれない。

 関東近郊でリゾート型の分譲公団団地は少ない。ただ、発想を変えて、老朽化した熱海のリゾートマンションなら団地以下の値段で手に入る可能性が高い。東京への電車賃も高くなるが、都心に出る機会が週1回でいいなら埼玉や千葉の自然に恵まれた物件がお勧め。週1出勤なら、たとえ片道の電車賃が5倍になってもたかが知れている。月1なら熱海や茨城県もお勧めだ。

 さて、公団団地は、分譲棟の存続や建て替え問題には売り主の旧日本住宅公団(UR)は関与していない(賃貸等は別)。公団がもう少し、分譲棟の保存に手を貸してもよさそうだが、一切しないところが、「団地妻」のカムバックにはいい環境のかもしれない。団地研究家の斬新な視点には脱帽するばかりだ。
■■山下 努■■(2007-05-09)

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