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コンバージョン(用途転換)は本格化するか(2003-11-05:住宅新報社「不動産鑑定」編集長・柄澤浩)

事務所ビルを住宅に
 都市・建築分野の専門家の間で数年前から使われ出した言葉に「コンバージョン」がある。野球の世界で投手を外野手にとか、逆に内外野手を投手に転換起用する「コンバート」と同じ意味で使われており、主に、「オフィスビルを住宅に用途転換すること」を指している。
 折から、地球環境への関心の高まり(資源の有効活用、廃棄物の削減など)や、東京都心部周辺に大型ビルの建設ラッシュが押し寄せることに伴う『2003年問題』(ビル余り現象)が懸念された時期である。その問題の解決策の一つとして、また、都市再生、街の活性化策として注目されて登場した手法である。

 すでに、立地面や設備面で陳腐化して、オフィスビルとしては需要がつきにくくなった中小規模の築年数の経過した古いビルなどで、居住可能なSOHOオフィスや住宅に改造・転用する事例や構想がいくつか出始めている。『2003年問題』が懸念に違わず、競争力に劣るビルに深刻な影響を与えていること、さらに、建設業界が新しい事業分野として捉えていることがそれを後押ししているようだ。

中小規模で古いビルは苦境に

 この「コンバージョン」。果たして、事業として成り立つのかどうか。今後、新しい手法として定着するかどうかのポイントである。欧米では、歴史的建造物や街並み景観を保存するための手法として、行政の支援のもとに「コンバージョン」が始まり、最近では大規模分譲マンションとして転用する例も増えているという。これが日本でも可能なのかどうか、そのための支援策は――といった研究が民間で本格化したのは数年前。平成15年度からは国土交通省も推進に乗り出し、官民挙げての取り組みはようやく始まったばかりだ。

 長引く不況と大型ビルの供給ラッシュで、心配されたように東京のビル余りは深刻化し、都心5区の室率は最近でも8%台後半の高い(悪い)水準で推移。賃料水準も軟調が続いている。しかも、2003年問題の次には、『2010年問題』(団塊の世代が60歳定年でオフィス街を去る)も控えている。この先、『近・新・大』(近くて、新しく、大きい)ビルに玉突きのようにテナントが移動して、「不便で、古くて、小規模」のビルは大苦戦を強いられる――と見られている。例外はあるが、特徴のない中小規模ビルはテナントの確保が難しく、苦境に立たされることは避けられそうにない。

ビルオーナーの選択

 こうなると厳しいのがビルの経営だ。従来、ビルオーナーは″街の旦那衆″と呼ばれていたが、すでに大変な時代に突入している。それもオーナーが保有するビルだけの問題でなく、オフィス街として地域全体が″地盤沈下″してしまったところもある。そこでは、住宅にした方が「より高い収益」が確保できる逆転現象も出現している。実は、こうしたエリアが最も「コンバージョン」に適しているといわれるのである。古いビルの場合、オフィスビルとして経営を続けるには、テナント確保のため、耐震性・快適性・情報化対応などの設備投資が必要だが、投資しても立地によっては良質なテナントが獲得できるかどうかは不明だ。

 一方、住宅の場合はどうか。研究会の調査によると、コンバージョン適地といわれている都心周辺部では、便利な都心居住を志向する人が増えているためか、条件さえ折り合えば、確実に需要が存在することが明らかになっている。こちらもビルのリニューアルと同様にかなりの設備投資が必要になるが、テナント確保の確率はより高まることになる。オーナーがどういう選択をするかである。

地域再生の役割も

 元々オフィスで設計したビルは、住宅に転用するとして、果たして快適性が確保できるのかといった問題点も指摘されている。だが、推進のための規制緩和などとともに、多くの関係者が新しい事業分野として取り組んでいることを考え合わせると、設計上や技術的な問題は解決されていくだろう。あとは用途転換のためのコストがいかに安価にできるかである。

 「コンバージョン」は夜間人口の少なかった街に居住者を増やし、定着させることにもなる。転用に伴う再生効果はビルそのものだけでなく、地域の再生という機能をも担うことになる。地味な手法ではあるが、その面で大いに注目したい。

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