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不当な住宅被害、どう救済?(2006-02-03=ジャーナリスト・霊山智彦)

 耐震強度偽装事件は、悪質な建築士や建設・販売業者による危険マンション乱造を見逃していた建築行政そのものへの厳しい批判も招いており、国土交通省は急きょ、今国会中にも建築基準法や建築士法など建築物の安全にかかわる法体系全般を抜本改正することに踏み切った。
 改革の骨子は昨年末、国土交通相の諮問を受けた社会資本整備審議会建築分科会が審議中で、構造計算書の偽装を見抜けなかった建築確認や中間検査などの審査・検査体制をいかに有効なものに立て直すか、民間の指定確認検査機関に対する行政監督の在り方をどうするか、などが課題になっている。

 しかし、わが家が突然、震度5程度の地震で簡単に倒壊する恐れが強い危険マンションだとして、役所から使用禁止、立ち退きを通告された被害家族たちはこぞって、果たして安全で快適なわが家を再び手に入れることができるのか、今後への不安に駆られている。

 災害の際もそうだが、このように突然降りかかる住宅被害の救済、回復をどうしたらよいのか。

◆新しい保険による救済策?

 諮問でも、住宅建設・販売業者の瑕疵担保責任が確実に果たされる措置の充実・強化策を求めている。2000年に施行された住宅品質確保法(品確法)で住宅新築工事の請負人及び売り主は10年間の瑕疵担保責任を負うことが明記され、問題があった場合の補修や建て替え、補償が義務付けられるようになったが、その業者が倒産したりすると被害が回復されないので、万全の方策が必要というのである。

 ただし、この件については早とちりした一部マスコミが大々的に、すべての分譲住宅建築主(販売業者)に新たな保険加入を義務付け、欠陥による大規模補修や建て替えなどが必要になった場合に保険金で対応する方向を決めたかのように報じたため、関連業界が騒然となる一幕もあった。

 保険制度としては既に、住宅性能保証制度が設けられているからだ。が、主として中小建設業者が加入し、05年度に登録申請した約6万戸の新築住宅は1戸建て住宅が中心で、マンションは年間新築分の1%にも満たない約5000戸。今回偽装が判明したマンションは1軒も対象になっていない。

 欠陥住宅、中でも対応が簡単に済まないマンションの欠陥救済策は、これまで設計、施工、販売業者の責任のなすり合いなどで消費者が泣き寝入りさせられるケースが多発するなど、曲折を経てきている。この性能保証制度も80年に北海道で、市民運動的にスタートした当時は、大手業者の参加もめざしていたのだった。

◆住宅性能保証制度の悩み

 しかし、大手はどこも「技術を十分磨いており、大きな欠陥はまずあり得ない。万一問題があれば自社責任で対処するので保険は不要」との建て前のまま今日に至っている。中小業者も同様だが、内実はわずかな業者登録料や事務手続きを敬遠する風潮が普及を阻んでいるようで、現在の参加率も3割にとどまっている。また、新築住宅1軒ごとに6〜9万円の登録料負担を嫌がる建て主も多いとみられている。

 つまり、こんな現状で新たな保険の義務付けが業界にも消費者にも受け入れられるわけがない、という空気が目下の大勢なのだ。特に、国は建築確認制度を抜本改革して悪質設計士や業者を完全排除するのが先決で、批判の矛先を新保険でかわそうとするような発想はおかしい。業者らに救済能力が不足しているなら、偽装を許してきた国や検査機関が責任を取るべきだ、という主張が被害者の間には強い。

◆欧米の制度、利用実態も参考に

 これに対して国土交通省住宅局では、諮問で触れている保険はいくつかの選択肢の一つに過ぎず、採用する場合も住宅性能保証制度と別にすることはあり得ない、と慎重だ。
阪神・淡路大震災をはじめ過去の災害で住宅を失った被災者たちの間に、「私たちが必死で国による再建支援を訴え自治体や識者も応援してくれたのに、国は『住宅はあくまでも個人財産だから国の介入は適当ではない』と冷たかった。それが、偽装事件ではあっさり各種支援策に踏み切っているのは違和感がある」との声があるからだろう。

 といって、ようやく品確法で業者の瑕疵担保責任が明確に義務付けられたばかりなのに、一部悪徳業者がその義務を遂行できないからといって安易に国民の税金で肩代わりしていいのか、という論にも耳を傾けなくてはなるまい。

 どうすべきか。屋上屋の新保険構想ならとんでもないと思ったが、住宅性能保証制度の改革も含めて幅広く議論するというなら、成り行きを見るしかないだろう。

 ただ、昨年9月、アジアで初の「国際住宅建設・性能保証会議」が東京で開かれた際、早いところでは1920年代から各国で性能保証制度が実施され、日本と同じ任意加入なのに英国が年間販売住宅の98%、カナダ、オランダ、アイルランドなどが60〜70%も登録していること、フランス、オーストラリア、スウェーデンでは強制加入になっていることを知り、日本の制度も普及への改革が必要なのでは、と感じたことは書いておこう。

 建築基準法は、違法建築に甘く、まちづくりの視点も欠けた「代表的ザル法」の汚名を長年背負ってきた。確認の審査・検査に民間を活用するという規制緩和策の不備是正に加えて欠陥住宅の被害救済策に取り組むなら、今度こそ拙速ではなく、市民も十分に参加する徹底的な論議を展開し、21世紀の国際社会にふさわしい法制度にしてほしいものである。

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